【代表×人事対談】急拡大の痛みを経て、ランプが「組織の再構築」に挑んだ理由
資金調達を経て、わずか1年で7名から約30名へと急拡大を遂げた株式会社ランプ。
しかし、その躍進の裏側には、優秀な人材が集まったからこそ生じた「前職でのそれぞれの成功体験によるコンフリクト」という組織の壁がありました。
なぜ今、ランプは自社組織の再構築に踏み切ったのか。
経営陣と人事が意見を交わした経営合宿から、第2回All Handsでの新バリュー発表に至るまでの軌跡を、代表の河野とHRマネージャーの土江が振り返ります。

河野 匠 / 代表取締役 CEO
滋賀県出身。学生時代に起業し、2017年2月に株式会社ランプを設立。 2020年にテイクアウト特化型の注文受付・管理SaaS「テイクイーツ」をリリース。 「地域社会を灯す」というミッションを掲げ、全国の飲食・小売店の課題解決と事業成長を牽引している。

土江 有里奈 / HRマネージャー
関西大学卒業後、営業職を経てネオキャリアに中途入社し、新卒採用チームに抜擢。 その後、マネーフォワードにて新卒採用立ち上げを行い、採用部副部長、人材開発部長も歴任。 グロービスを経て、2025年8月に株式会社ランプへ1人目人事として入社。 現在は採用や労務、人事評価制度の構築など、組織開発全般を牽引している。
7名から約30名への急拡大。その裏で直面した「前職の成功体験」というカオス

── 資金調達を経て組織が急拡大する中で、どのような課題に直面していたのでしょうか?
河野:
シリーズAの資金調達後、事業をさらに加速させるために採用を強化し、わずか1年で組織は7名から約30名へと急拡大しました。大手SaaSやメガベンチャー出身のマネージャーレイヤーなど、非常に優秀で熱量のあるメンバーが続々と集まってきてくれて、私自身「これで一気にスケールできる」という大きな高揚感がありました。
しかし、いざ人が増えて実務が走り出すと、共通の「正しさ」が定まらないまま、各個人の正義で仕事をしてしまうという課題に直面したのです。
いざ議論が始まったときに、「この熱量をどこに向けていいのかわからない」という戸惑いや、「前職での成功体験」を元にした話に終始していました。
「前の会社ではこうだったから」という意見が飛び交い、それぞれの正義が衝突。本質的には今のランプにとって必要なことを話すべきでしたが、「ランプとしての正義」がなかったため、出口のない議論になってしまいました。
私自身も初めての組織フェーズだったので、新しい優秀なメンバーとどう組織を創り上げていくか、大きな迷いがありました。
土江:
私が入社したのは2025年8月ですが、そのときが河野さんやランプの迷いの過渡期だったように感じます。
何をよしとするのか分からない状況で、シリーズAのハードな環境で働くことは、並大抵のことではありません。メンバー同士のやり取りもみんなの前提が揃っておらず、すれ違っている印象でした。
東京と京都で拠点が離れていることもコミュニケーションの難しさに拍車をかけ、プロダクトの成長に組織がついていけていなかった印象です。
── ランプとしての基準が属人化していたのですね。具体的に現場ではどのような課題がありましたか?
河野:
人数が急激に増えたことで、これまでのフラットな組織から、階層を持った組織構造への移行が急務になっていました。優秀なマネージャー陣がジョインしてくれたので、彼らに役割を定義し、期待値をすり合わせて権限移譲を進めようとしたんです。
しかし、いざ権限を渡そうにも、「ランプとしての判断基準」が属人化していたことが大きな壁になりました。
会社としてのバリュー自体はありましたが、その言葉の背景やどんな行動がランプとしての規範行動に該当するのかが、個々人に落ち切っていない状態でした。
その象徴的な例が、「ユーザーファースト」という言葉の解釈です。
本来は「お客様の課題解決」を指していましたが、実際はお客様から言われた機能だけを実装する、御用聞きのような仕事になっていました。 「ユーザーのため」という言葉が免罪符になり、ただ要望に応えるだけの状態に陥っていたのです。
これは一例にすぎず、このような事象が同時多発的に発生し、このままでは組織崩壊、ひいてはお客様に良い体験を届けられない、という危機感が強くありました。
「是正」から「理想の追求」へ。熱海の経営合宿でぶつかり合ったランプの基準

── 組織を立て直すため、熱海で経営合宿を行ったとお伺いしました。
土江:
はい、新しくジョインした役員や部門責任者と丸2日間をかけて、「ランプらしさとは何か」を徹底的に対話しました。
起点は、創業者である河野さんの「人生と価値観」です。
幼少時代から起業に至る背景、ランプに込めた想いなど、定常業務内ではなかなか聞くことができない話を赤裸々に語っていただきました。

そして、その話から役員陣が感じたことや共通する原体験を語っていただき、河野さんとランプに、自分の想いを重ね合わせる時間を作りました。
当たり前ですが、ランプの思想は河野さんから始まっています。
今後、多様なバックグラウンドを持つ優秀なメンバーでチームを組成していく上で、それぞれの過去の成功体験をそのまま持ち込むのではなく、良い形で「ランプらしさ」へと昇華させていく必要があります。そのためには、「ランプ色に合わせる」ための源泉が、あくまで河野さんにあるべきだと考えていました。
議論の出発点である「河野さん=ランプの思想」を中心に、自分たちの想いを重ね合わせるこの時間は、ランプが本当の意味で1つのチームになるために、非常に大きな価値があったと感じています。
河野:
経営陣と人事、部門責任者が本気でぶつかり合える、とてもありがたい機会になりました。
皆さんからの問いかけで、自分が大事にしていることを思い出せたり、しっかりと受け止めてくださったことで、「この方達なら背中を預けられる」という安心感にも繋がりました。

その後は言語化された想いと、現場の課題を照らし合わせて、新バリューを策定していきました。
そのときにポイントとなったのが、バリューが「ポジティブな言動」を促進できるかということです。
──過去のバリューとは何が違うのですか?
河野:
実は旧バリューは「〜するな」というマイナスを突くような「是正ルール」に近かったんです。合宿を通じて、それでは組織が前向きに推進していかないと気づきました。合言葉的なバリューが、「するな!」だと、嫌じゃないですか。
私自身、経営において「〜でありたい」という前向きな姿勢を大切にしています。 そのポジティブなイメージをバリューに内包させることで、メンバーが萎縮するのではなく、自発的に挑戦できる環境を作りたいと思いました。
土江:
河野さんが大切にしてる「らしさ」を現場の行動レベルまで落とし込むには、悪い部分を指摘するのではなく、どうあるべきかを問いかける形にした方が合っていました。
実際にバリューがポジティブな表現に変わったことで、日常のコミュニケーションにも取り入れやすくなりましたね。
ただのルールではなく、私たちが目指す組織の姿を共有するための大切なメッセージとして、機能するようになったと感じています。
── 具体的にはどのようなバリューがありますか?
河野:
全部で4つあります。「Be Gentle」「Issue Driven」「User First」「Keep Exploring」です。

中でも大きく変わったのは「Be Gentle」と「Issue Driven」です。
「Issue Driven」は、顧客の御用聞きになるのではなく、要望の裏にある本質的なイシューを深く探求してほしいという想いから生まれました。
目の前の課題に対して「なぜ?」を繰り返し、本質を見極める。 それができて初めて、私たちが提供する価値が最大化されるため、このバリューが設定されました。
土江:
「Be Gentle」には、仲間へリスペクトを持ち、率直なフィードバックを交わし合える関係性を築きたいという想いが込められています。
今のフェーズに正解はありません。そのため、自分の意見や成功体験に固執せず、仲間を受容し、共に考えることが不可欠です。そのような姿を体現してほしいと思い、このバリューを設定しました。
All Handsで交わされた「想いのバトンパス」

── 熱海合宿で定まった新バリューを組織に落とし込んでいくにあたり、急拡大フェーズを支える重要な「HR施策」としてAll Hands(全社会)を活用されていますよね。この場は第1回、第2回と回を重ねる中で、どのように形作られてきたのでしょうか?
土江:
第1回のAll Handsは、私がちょうど入社したての2025年8月に開催されました。7名だった組織が初めて20名近くまで増え、全員が顔を合わせる記念すべき回でしたね。
河野:
はい。ただ、実は最初は私が「人が増えたし大飲み会をやろう!」と言っていたところから始まったんです(笑)。
土江:
そうでしたね(笑)。大飲み会のテンションは残しつつ自己紹介のコンテンツなども行い、メインの企画として、初めてテイクイーツを導入していただいた『寿司のむさし』さんに出張でお寿司を握っていただきました。
河野:
テイクイーツを使うと、こんなにも美味しいお寿司が家で食べられるんだと、新しいメンバーがプロダクトの価値を実感する機会になりましたね!
また、導入当時に期待いただいたことや、今でもご利用いただいている理由をお話しいただき、プロダクトへの熱をメンバーに伝播させることもできました。「導入当時はサーモンの注文が、気づいたらイクラに変わっていてね(笑)」という失敗談も出てくるくらい、率直に語っていただき、皆さんがプロダクトの過程を知れるありがたい機会でした。

ただ第1回目はバリュー浸透の設計まではしていませんでした。そもそも組織課題も顕在化していない時期だったので。
実際にバリュー浸透のために動き出したのは、経営合宿後の第2回目となるAll Handsです(2026年1月)。
── 2回目のAll Handsは、どのような設計をされたのですか?
土江:
第1回目でメンバー全員にしっかりと「プロダクトの価値」や「事業への熱量」が伝わり、事業に対する確固たる土台ができていたからこそ、組織の壁に直面した後の第2回All Hands(2026年1月)では、今後のランプを共に創り上げるための「思考・行動のOSとなるバリュー」をインプットする場にしました。
ただのイベントで終わらせるのではなく、会社が目指す方向を明確に伝え、メンバー全員の当事者意識を強めることが目的です。 感情の共有から、実践への落とし込みへと、段階を引き上げる狙いがありました。
河野:
第1回で生まれたプロダクトへの熱量を引き継ぎつつも、第2回ではランプという「組織」が目指す未来へ向けて、新しいバリューを全員に共有する機会にしました。
もちろん、ただバリューを伝えるのではなく、私自身の想いや背景も余すことなく伝えました。
私自身の過去の経験や経営ポリシー、そして新しいバリューに込めた想いなど、皆さんに「バトンパス」をすることで、ランプらしさの中で自立した働き方をしてほしいと伝えました。


── 経営合宿同様、河野さんの想いを伝えたのですね。それ以外にバリューを浸透させる工夫はありましたか?
土江:
明日から「個人・チーム」単位の行動へ落とし込んでもらうためにワークショップを実施しました。
まずは、河野さんの発言を受けて、個人が率直にどう感じたのかをシェアし合い、その上で個人やチームでどう体現するのかを発表することで、自分ごと化を促しました。このワークから、「Be Maniac(誰よりもお客さんを理解しよう)」というワードが生まれ、今では「Be Maniacのために」と、メンバーがお客さんの商品を買って、みんなでシェアすることも現場では行われています。
また、自分たちが支援したい地元のお店を地図にマッピングする「灯すリスト」を作成するワークも実施しました。今ではそれが営業リストとなっています。ちなみに、実際に受注したこともあり、セールスと起案者が大喜びしていましたね!!

──この第2回All Handsが、新バリュー浸透の大きな「きっかけ」になったのですね。
河野:
はい。もちろん組織全体への完全な浸透はこれからですが、確かな手応えを感じています。 少しずつですが、バリューが共通言語として使われ始め、日常のコミュニケーションが滑らかになってきました。Slackでバリューのスタンプを送り合う文化も生まれましたし、何か問題があったときに「それってBe Gentleかな?」と、バリューを軸にした健全な議論ができる土壌が育ちつつあるように思います。
土江:
現場のメンバーからは「経営ポリシーとプロダクト開発の接続への理解が深まった」という声が多く寄せられました。 何のために開発しているのか、その意義が明確になったことで、モチベーションの向上に繋がっています。
また、役員陣の間でも「うちっぽくて、いいですね」といった表現が増え、ランプらしさを自然と語れるようになってきました。 感謝の言葉も増えるなど、組織全体が良い方向へ変化し始めていると実感しています。
明文化されていなかった暗黙知がオープンになり、なぜこのバリューが必要なのかが全員に腹落ちし、これからランプが本当の意味で一つになっていくための、素晴らしいスタートを切れたのではないかと思っております。
ランプが今求める「アンラーニング」力とは

── 現在のランプのフェーズにおいて、大切なスタンスはなんですか?
河野:
やはり、過去の成功体験を「アンラーニング」するスタンスだと思います。
私たちは3,500店舗以上の実績を持っていますが、地方の飲食・リテール領域はまだまだ未開拓の余白だらけ。 前提条件が異なる新しい市場において、過去の成功体験をそのまま持ち込んでも通用しない場面が多く存在します。
だからこそ、これまでの常識を一度手放し、ランプの文脈や目の前の顧客の特性に合わせて柔軟に適応していくことが不可欠です。
土江:
おっしゃる通りですね。
資金調達したとはいえ、カオスなスタートアップという環境に変わりはありません。そのため、自分なりの「ランプで走る理由」を持った人でなければ、今のフェーズで必要な「馬力」が出ないと思います。
ちなみに走る理由とは、ポジションや名誉という他者の評価に支えられたものではなく、「日本の食文化や地域社会への想い」という、自分の原体験に根ざすものです。
実際にランプで活躍しているのは「実家が鰻屋」であったり、「食×Saas分野が自分のやりたいこと」という原点や想いが、ランプと強く重なっているメンバーです。
その不変の想いがあるからこそ、難しい環境でもミッション達成のために、レベルの高い業務に取り組めているのだと思います。
── どのような方だと今のランプに合いそうですか?候補者さんにメッセージをお願いします。
土江:
受容力と柔軟性が高い方ですね。
このフェーズだと、日々色々なことが巻き起こり、今までの経験では太刀打ちできないことも多々あります。
そのときに過去の成功体験を当てはめるだけではなく、「そういうものか」と一度受け入れ、その上で要因と解決策を仲間であるメンバーたちと協議し、素直に行動してみる方ほど活躍していますね。
AIの進化が凄まじい時代ですが、そういう柔軟に変化していける方達とこれからのランプを一緒に創っていけたらなと思っています。
河野:
私が実現したいランプの未来を、共にどう形にしていくのかを考え、主体的に実行してくれる方と働きたいですね!
優秀なメンバーは揃っていますが、ランプはまだまだ完成していません。
この未整備な環境を面白がり、一緒に新たな勝ち筋を創り上げてくれる方を心待ちにしています!