【HRマネージャーインタビュー】育児とキャリアの葛藤を越え、元マネーフォワード人材開発部長が20名規模のスタートアップへ入った理由。
株式会社ランプは、「地域社会を灯す」ことをミッションに掲げ、食品小売向け注文受付・管理SaaS「テイクイーツ」の開発と運営を行っています。
今回は、メガベンチャーで人事領域の要職を歴任し、ランプの1人目人事としてジョインした土江さんにインタビューを行いました。
人事として様々な実績を残してきた彼女が、なぜ20名規模のランプを選んだのか。そして、育児とキャリアの葛藤を乗り越え、どのように自らの手で働く環境を創り上げているのか、その背景に迫ります。
土江 有里奈 / HRマネージャー
関西大学卒業後、営業職を経てネオキャリアに中途入社し、新卒採用チームに抜擢。その後、マネーフォワードにて0から新卒採用立ち上げを行い、採用部副部長や人材開発部長を歴任。グロービスを経て、2025年8月に株式会社ランプへ1人目人事として入社。現在は採用や労務、人事評価制度の構築や、プロダクト開発チームのサポートなど組織開発全般を牽引している。
将来の子育てを見据え、若いうちにスキルの貯金を。圧倒的な量をこなした20代
ーー新卒から実力主義のベンチャー環境を選ばれていますね。どんな思いがあったのでしょうか。
私が新卒からハードな環境に身を置いた背景には、将来のライフプランに対する逆算の思考がありました。
女性としてキャリアを考えた時、将来的に出産や育児でどうしても仕事がストップする時期が来るだろうと想像していました。だからこそ、どれだけ早い時期に圧倒的な経験量を積み、スキルの貯金を作れるかが重要だと考えていました。また、幼少期に「女の子だから家事をしなさい」という育てられ方をしたことへの反骨心もあり、男女関係なく、ビジネスの世界で自分の実力を試して早く自立したいという気持ちが強くありましたね。
ーーなるほど。その後はどのようにキャリアを歩まれたのですか?
1社目で毎日300〜600件のテレアポや飛び込み営業を経験した後、ネオキャリアに営業として入社しました。
入社して3ヶ月ほど経った頃、新卒採用を80名から150名に大幅に拡大するタイミングで、前職で培った行動力などを評価していただき、新卒採用チームに抜擢されました。そこからは毎日20〜30名程度の集団面接を行い、年間で2,000名を超える学生さんと向き合い続ける日々でした。その中で新卒採用の活動を愚直にPDCAをひたすら回し続けながら実行し続けていました。
ーー凄まじい行動量ですね。
はい。でもただ数をこなすだけでなく、人事としての介在価値を深く学べる機会になりました。
入社後のギャップを生まないよう、正直にリスクを開示しながら会社の魅力を伝える大事さにも気づけましたし、多くの候補者を見る中で、どんな人が入社後に活躍するのかという、採用から活躍までを一気通貫して見ることができた良い経験にもなりました。
自分を起点に入社を決めてもらえたことや、自分が採用した人材が数年後の会社の売上を作っていくという長期的な視点での貢献に、人事という仕事の大きなやりがいを感じるようになりました。

0からの採用立ち上げ、キャリアと子育ての葛藤
ーーその経験を経て、マネーフォワード社への転職を決意されたのはなぜですか?
ネオキャリアでは新卒採用の歴史が長く、一定、採用戦略がある状態だったこともあり、0から自分の手で採用戦略の策定ができるキャリアを積みたいと考え転職を決意しました。
当時のマネーフォワードは新卒採用の担当者がいない状態だったので、今までの知見を活かしながら成果を出せるチャンスだと感じました。
入社してすぐに全社に向けて”新卒採用を実施する意義”を発表するところから始まり、経営との対話を通した年間予算の確保、採用要件定義や見極め軸の設定、母集団形成、イベント設計、選考プロセス設計までを行いました。
結果として、東京大学や京都大学、早慶などの上位レイヤーの採用を成功させ、ビジネス、エンジニア、デザイナーの3職種で年間20名の優秀な学生を採用することができました。
ーーかなり難しい採用だったと思いますが、なぜ実現できたのですか?
成果を出せた要因は、レスポンスの速さやアクション数の必達といった「凡事徹底」の積み重ねと、自分が信じたビジョンに対して周囲からの共感を得て、現場や経営を動かした「巻き込み力」にあったと考えています。
以前、他社への入社がほぼ決まっていた学生に対し、3日間という極限のタイムリミットの中で選考からクロージングまでをやり遂げたことがありました。役員やエンジニア責任者を「この人は絶対にうちに必要な存在です」と説得して一気にスケジュールを調整してもらい、最後は相手の心に届くような熱いラブレターにも似たオファーレターを送り、入社を決めていただきました。
前職の量を追いながらも質を担保するというハードな環境で培った「凡事徹底を行いながらも、一人ひとりの人生に深く向き合う」というスタンスが、土壇場での逆転内定承諾という結果に結びついたのだと感じています。
ーーそうして手ごたえをつかんでいたタイミングに、育休という転機が訪れたとお伺いしました。
ちょうど新卒採用をゼロから立ち上げ、年間20名という採用成果を一人でやり遂げた頃でした。次は自分がマネージャーとして組織を率いるんだと、キャリアの階段を夢中で駆け上がっていた時期です。
そんなとき、第一子の妊娠が分かりました。
嬉しい気持ちと同時に、正直なところ、当時はこれまで積み上げてきたキャリアが中断されてしまうという大きな不安がありました。20代後半、マネージャーへの意欲が高まっていた時期だったからこそ、キャリアが途切れることへの焦りを一人で抱えていたように思います。
今振り返れば『幸せな悩み』と言えますが、当時はつわりがひどく1ヶ月ほど休職も経験し、『体力と健康には自信があるから仕事がやれる』という自分の拠り所が崩れていく恐怖がありました。
ベンチャー企業が急成長する中で1年も現場を離れ、『戻ってきたときに私は必要とされるんだっけ?』という焦りも抱えていましたね。『早く仕事に戻って価値を証明したい』という社会人としての焦燥感と、『この子を何よりも第一に考えたい』という母としての想いの間で、揺れ動く日々でした。
ーーその葛藤を乗り越えた後、復帰後はどのように前に進んでいったのでしょうか。
復帰後は関西へ異動し、関西拠点のエンジニア中途採用を担当しました。
実は、復帰して最初の1ヶ月は『もやもや期』でした。
全力で走りたいのに、子供の発熱で迷惑をかけるかもと、言い切れないジレンマがあり、これまで仕事に全力投球して出せていたバリューが子育てとのバランスをとりながらでしか出せないギャップにすごく苦しみました。
でも、そこで立ち止まるのではなく、自分がどういう状況ならバリューを出せるか、業務やスキルを整理しました。心配性な私は復帰の数ヶ月前から上司に『面談で聞きたいことリスト』を送り、細かく期待値をすり合わせたりもしていました(笑)。
復帰後は、いきなり完璧を目指すのではなく、週を追うごとに『これやります』と自らできることを少しずつ積み上げて信頼を獲得していきました。
時間ではなく『質』でプロとしての価値を出す働き方へマインドを切り替えた結果、コロナ禍でフルリモートになる中、エンジニア採用において半年で6名という目標を3ヶ月で達成することができました。
その後、採用部副部長として、新卒採用チームのマネジメントを経験し、組織が800名規模になったタイミングで人材開発部の立ち上げを任せてもらえるチャンスがあり、部長に就任しました。採用という入り口だけでなく、部長職や次世代幹部候補の育成、エンゲージメントサーベイの運用、グループ会社との人事制度の連携など、人事としての専門性を組織開発の領域へと広げることができました。

自分が輝けたメガベンチャーの「熱」を感じた。人事キャリアをランプに賭けた理由
ーーマネーフォワードで部長まで務められた後、一度グロービスへ転職されていますよね。そこにはどのような背景があったのでしょうか。
人事として組織の内側を見るだけでなく、外側から様々な企業の組織課題に触れてみたいという思いがあり、グロービスへ転職しました。
関西圏のエンタープライズ企業を60〜70社ほど担当し、各社の課題に合わせた組織開発の提案営業を行いました。非常に学びが多く刺激的な環境だったのですが、一方で、ここで「もっと学びたい、もっとクライアントにコミットしたい」という自分の情熱と、二児の母として「家庭とのバランスを保たなければならない」という現実との間で、大きな壁にぶつかってしまったんです。
また、外から様々な企業の組織課題をコンサルティングする中で、「やっぱり私は、第三者としてではなく、当事者として内側から泥臭く組織を創り上げていく方が好きなんだ」という自分の本心にも気づくことができました。
ーーその葛藤と気づきを経て、最終的にランプへの参画を決められたのですね。
はい。私の人生には、ずっと大切にしている「教育」「女性のキャリア」そして「地域活性化」という3つのテーマがあります。自分が当事者として情熱を注げて、かつ家庭とも両立しながらフルスイングできる環境を探していた時、知人の紹介で代表の河野に出会いました。
正直に申し上げると、最初から「食」というドメインに強い関心があったわけではありません。
ですが、“地域社会を灯す“というランプのミッションを耳にした時、自分の地元の情景がふと頭に浮かび、深く共感したんです。
テイクアウトという身近な体験を通じて、地方の飲食店が活力を取り戻していく。自分の仕事が誰かの日常を少しずつ良くしているという、この上ない「手触り感」に強く惹かれました。
ーー人事のプロとして、組織そのものに感じた「ランプならではの面白さ」はどこにありましたか?
一番の決め手は、河野という経営者の人間性と、そこから滲み出る組織の「誠実さ」です。
河野は、自分ができないことを「できない」と素直に言える、変なプライドのない非常に懐の深い人物です。自分の弱さを見せつつも、仲間に心から頼り、ワンチームで理想を追っていく。そんな彼の姿勢に、お互いをリスペクトし、ボトムアップで組織を創り上げていく、私が大好きだったマネーフォワードの組織風土を感じました。
会社の現状を綺麗に飾り立てるのではなく、ありのままを誠実に語る社員たちの姿を見て、「子育てが大事なこの時期だけど、この環境でまた自分の時間を投下して、社会に貢献したい!」という熱い気持ちになりました。
ーー実際に入社し、二児の母として育児と両立しつつ、1人目人事として組織づくりを牽引される中で、ランプの環境をどう捉えていますか?
ランプの面白さは、ルールが完成されていない「余白」にあります。制度が整うのを待つのではなく、成果を出して信頼を貯金すれば、自分に最適な働き方を自ら設計し、交渉できる文化があります。
例えば、以前は週5日の完全フル出社が基本でしたが、私は「今後の事業成長を見据えて組織を拡大し、多様な優秀な人材を採用して強いチームを創るためには、効率性はもちろん、社員が末長く活躍し続けるための柔軟な働き方も考慮したハイブリッド型のワークスタイルが必要です」と河野に提案しました。私個人のライフステージの都合としてではなく、あくまで『事業を伸ばすための組織戦略』として議論を重ねた結果、実際に制度として適応された**実例もあります。自分たちの手で「組織のパフォーマンスを最大化させるための働きやすさ」さえも創っていけるのは、このフェーズのスタートアップだからこその醍醐味だと感じています。
ーーなるほど。全社的にご家族がいらっしゃる方の割合も増えているのでしょうか。
はい、今では役員陣を含め、社員の約3分の1が子育て世代です。河野自身が「家庭を何より優先してください」と本気で考えている人なので、子供の急な体調不良などへの受け入れ方も非常に温かく、心理的安全性は極めて高いと感じます。
ただし、それは決して「ぬるま湯」ではありません。
私たちは「10時間かけて出す成果よりも、8時間で研ぎ澄まされた成果を出す方がプロとして価値がある」という強い生産性主義を大切にしています。時間的な制約があるからこそ、限りなく最小工数で、パフォーマンスを最大化させる。「子育て中だから」と守りに入るのではなく、限られた時間で圧倒的な成果を出し、キャリアも家庭も両方全力で楽しもうという、前向きな土壌がここにはあります。

戦略を評論するより、自ら実行する。私たちが求める共に組織を創る仲間とは
ーー入社から半年、現在はどのようなミッションに取り組まれているのでしょうか。
入社当初は新規採用がメインミッションでしたが、この半年で組織が急拡大したこともあり、実際には労務、総務、人事評価まで、会社として必要な土台をすべて揃えることに奔走しています。
また、直近では人事主導で経営合宿を開催しました。河野の頭の中にある”地域社会を灯す”というミッションを、どのように日々の業務やバリューに落とし込むべきか、現場メンバーに伝わるように言語化し、目線合わせをするための前準備を行っています。
今までの人事キャリアで見てきた、採用からメンバーが活躍して事業が成長していく過程を、ほぼ0から作れていることには、大きなやりがいと手応えを感じています。子育てとキャリアの両立に迷ってきた時期も長かったですが、ランプなら両方を諦めずに進んでいけると強く感じています。
ーー最後に、これからどのような方にランプの仲間になってほしいですか?
河野が実現したい明るい未来を、どうやって作っていくべきかを共に考え、強い気持ちを持って実行してくださる方とお会いしたいです。
今のランプのフェーズだと、最初から上段にある戦略や戦術、そこに紐づくKPIが明確に定まっていないケースも多々あり、何もないところから自分たちの手で作っていけることが、今のフェーズの最大の面白さかなと思います。
そのため、どんな戦略があるのかよりも、ミッション実現のために、どんな戦略が必要かを一緒に考え、試行錯誤しながら、一緒に実行していけるような素敵な方に、仲間になってもらいたいです。
また、役職や肩書きに重きを置くのではなく、人と人との関わり1つ1つを大切にできる方に来ていただきたいです。お互いの得意分野を認め合い、リスペクトを持って背中を預け合える組織を一緒に作っていける仲間をお待ちしております。
