「明日はダメかも」と思ったことはない。地域の未来に繋がるサービスを、京都で作りたい。

「明日はダメかも」と思ったことはない。地域の未来に繋がるサービスを、京都で作りたい。

飲食・小売店向けDXサービス「テイクイーツ」が誕生したきっかけは、ランプCEOの河野さんがコロナ禍でテイクアウト利用の不便さに気づいたこと。構想から2ヶ月でリリースし、5年目の現在では累計2,500店舗以上に導入されるサービスに成長しています。

しかし、河野さんが大学時代に初めての起業をしてから「テイクイーツ」に至るまでには、苦しい時期もあったと言います。それでも「明日はダメかも、と思ったことはない」と言い切る河野さんに、「ビジネスの力で地域社会を灯す」というビジョンを軸にランプを牽引する、CEOとしての想いを聞きました。

河野匠さん(代表取締役CEO)

​1992年生まれ、滋賀県大津市出身。大学在学中にアパレルEC事業にて起業し、株式会社ランプを創業。2020年に飲食・小売店向けDX支援プロダクト「テイクイーツ」をリリースし、これまで累計2,500以上の店舗に導入を実現。25年5月にはこれまでDNX Ventures社、ANRI社、ココナラスキルパートナーズ社、三井住友海上キャピタル社、GLOBIS社をはじめとした複数の投資家から累計10億円超の資金調達の上、更なる躍進を目指す。

学歴もスポーツも関係ない「ビジネスの世界」に夢中になった大学時代

――まずはランプ創業に至るまでの河野さんのお話を聞かせてください。ビジネスに興味をもったきっかけは何だったのでしょうか。

河野:私はもともとプロ野球選手になりたいと思っていた野球少年で、中学校の時には滋賀県にある当時全国1位のチームに所属し、チームメンバーと切磋琢磨していました。ただ野球の世界は競争も厳しく、プロに声がかかるような選手と自分には大きな壁を感じることが多く、本気で野球をするのは高校で最後にしようと決めました。

大学進学を決めたものの、小学校からずっと野球ばかりで勉強もしていなかった中、何か没頭できる別の機会を無意識に模索していたように思います。そんな折、自分で何かビジネスをしてみたいと思うようになり、個人事業主としてチャレンジをスタートすることになりました。

当時、周囲の友人から、日本でなかなか買えない限定のアパレル商品について話を聞く機会がありました。円高だったので「大学生に流行っているアパレル商品をアメリカで買ってきたら売れるんじゃないか」と思い立ち、ニューヨークに1人で買い付けに行きました。20歳くらいのときです。

――それがキャリアスタートということですね。ニューヨークで買い付けてきたものは、どうやって販売したんですか。

河野:最初は身近な友人に仕入れた商品を販売し、友人も喜んでくれました。もっと商売を広げたいと思い、プログラミングの勉強をして、自分でホームページやECサイトを作り、より多くの方に買ってもらえるようになりました。自分でイチからはじめた商売がうまくいき、心が満たされたのを覚えています。

しかし、円安になった頃から売上を伸ばしづらくなり、大学3年生の頃に新たにサイト制作の仕事をはじめました。ありがたいことに寝る時間もないほど忙しくなったので、友達を仲間に誘い、4年生のときには法人化しました。

ただ、会社経営をしている自分と就職活動までと割り切って力を貸してくれていた友人とではどうしてもモチベーションに差があり、最終的には解散のような形になってしまいました。

当時は自分の不甲斐なさを痛感しましたが、起業家として、あらためてイチからスタートしようと思い、その会社を一度整理することにしました。そしてインターンとして働いていた鈴木(現CTO)を社員に迎え、2017年2月にランプを創業しました。

ランプ創業時から、自社サービスで地域社会に貢献するのが目標だった

――ランプでの挑戦にあたり、河野さんの中でビジネスへの向き合い方やスタンスの違いはありましたか。

河野:1回目の起業は学生ということもあり、仕事というものが楽しくて、「自分でも何かできるんじゃないか」という気持ちが大きかったです。一方、ランプを創業するときには「社会に貢献できる事業をしたい」という考えが芽生えていました。

前の会社でインターンとして手伝ってくれていた鈴木に1人目社員として入社してもらい、安定して成果物を納品できる体制が整えられ、最初の起業と比べると、ある程度商売として形にできていたように思います。鈴木の助けもあり、お客様に向き合えるようになったことが、このような気持ちの変化につながったのかもしれません。

また、当時、サイバーエージェント創業者の藤田晋さんなどの著書を読み、自分もこんな風に世の中を変えられる事業ができればと憧れを抱いたのも、ベンチャービジネスに対する意欲が増していった理由のひとつかなと思います。

――「デジタルの力で 地域社会を灯す。」というビジョンへの想いをお聞かせください。

河野:ランプという名前で会社を立ち上げたときから、ビジョンは変わっておらず、「自社サービスで地域社会に貢献したい」と考えていました。私は滋賀で生まれ、学生時代も滋賀、京都を中心とした地域の中で人生を歩んできました。

都市部と比べ、高齢化社会の進む地域では、人手不足をはじめとした多くの問題を抱えており、私が子どもの頃を振り返ってみても、よく友人と過ごしたお店など多くの思い出の場所がなくなってしまいました。

時代の移り変わりとともに、地域の在り方が変わることは必然かもしれません。ただその過程の中で地域の魅力、良さが失われてしまうような未来になってはいけないと思っています。地域で生まれ育った自分だからこそ、地域の在り方をつくっていきたい、地域を灯せる存在になりたいという想いはきっと未来も変わらないと思います。

――「テイクイーツ」のアイデアに至った背景をお聞かせください。

受託開発の仕事を続けながら何度も自社サービスに挑戦したものの、なかなかうまくいかない日々が続きました。そんな中、2020年のコロナ禍でテイクアウトの不便さを当事者として体感することとなりました。

例えば電話予約しか受け付けてくれない、電話をかけても繋がらない、予約をしたはずなのに店舗で待たされる、など。他人との接触を減らすためにテイクアウトをしたいのに、それがスムーズにできないことに、強い課題意識を感じました。

そしてこの課題はコロナ禍だけでなく、平常時であろうとも変わらない、テイクアウトを利用するすべての方にとって解決すべき課題だと思い、プロダクト開発に着手することを決めました。これが「テイクイーツ」の着想に至ったきっかけになります。

――それまでの事業と手ごたえは違いましたか。

河野:「テイクイーツ」をリリース後、ありがたいことになじみのお店から京都の有名店まで「ぜひ使いたい」というお問い合わせを頂きました。これまで新たなサービスをリリースした時と明らかにお客さんの反応が違ったのを覚えています。

当時はフードデリバリーが台頭していましたが、地元・滋賀を含む多くの地域ではサービス対象外で多くのユーザーがテイクアウトを利用していました。また事業を走らせつつ、その他にもテイクアウトが利用されるシーンをリサーチしている過程で、テイクアウト市場における課題、ニーズはフードデリバリーをはじめとした他サービスではなかなか解決が難しいものだというのも見えてきました。そんな市場特性もあった中、テイクアウトに特化したことが、多くのお店に必要と感じて頂けたんじゃないかと思います。

そして2021年に複数の株主さんより資金調達をさせて頂くことになったのですが、このタイミングで受託開発事業は売却し、「テイクイーツ」一本で勝負する決断をしました。両方を100%でやるのが難しいのはわかっていましたし、時が来れば自社サービスに一本化することは、ずっと心に決めていたんです。ランプの創業期から多くのお客様に支えてもらってきたことには本当に感謝していますし、当時のご縁があったからこその今があると思っています。

「テイクイーツ」リリースから5年、新たに見えてきた世界線

――「テイクイーツ」に一本化したあと、どんなふうに進んできましたか。

河野:一本化を決めてからの2年間はかなり苦しい時期でした。サービスが未熟なまま規模が拡大していったこともあり、ご満足いただけずに解約になってしまうことも多かったんです。

焦って「フードデリバリーもやるべきか?」などと考えました瞬間もありましたが、最終的にはテイクアウトに原点回帰することを決め、「お客様の声を紐解いて整理し、本当の課題を突き詰めた上でアップデートしていく」ことに愚直に向き合い続けてきました。結果的にこれまで以上に多くのお客様に導入頂き、また良い意味でのご要望、リクエストなどを頂けるなど関係性も変わってきたように思います。

そんな積み重ねの甲斐もあり、2022年には二度目となる資金調達に繋げられることができました。苦しかった時期を何とか乗り越えたタイミングでもあり、当時、ご出資を頂けたことはとても嬉しかったです。

――2回目の資金調達後、2023年頃からは複数店舗を運営する大規模なお店との取引も増えましたが、サービス展開するうえで変化はありましたか。

河野:スタートアップのサービスを、いきなり大規模なお客様が導入することはめったにありません。たくさんの小規模店舗さんが「テイクイーツ」を導入してくださったことで実績ができ、全国に複数店舗を展開する大手のお客様にも受け入れられる、多くのエンドユーザーの方にご利用頂けるサービスに成長できたと思っています。

大規模なお客様の場合、1社にご導入頂くと100店舗増える、といったこともあります。ただ、大規模な店舗さんに導入させて頂く場合、当然ながら店舗運営にも大きく影響がでてきます。そのため全店舗へのレクチャー、店舗オペレーションに合わせた機能実装など、個社ごとに頂くご要望も異なり、向き合い方も違ってきます。ランプは直近まで7名の組織だったこともあって、体制を整えるのには苦労しましたが、メンバーみんなで乗り越えてこれたように思います。

――「テイクイーツ」は今後、どんなふうに進化していくんでしょうか。

河野:今後は店舗さんの業務効率を上げるだけでなく、顧客(エンドユーザー)のデータ活用など売上向上に貢献できる機能なども積極的に進めていきたいと思っています。テイクアウトを利用されるユーザーは、店内飲食など他サービスを利用されるユーザーの方とは異なる傾向があり、テイクアウトを中心に利用されるユーザー情報が利活用できることで店舗運営はもっとより良いものにできると感じています。

そして「テイクイーツ」は地域の店舗さんだけではなく、地域経済の発展にも貢献できる可能性があると考えています。例えば、ご当地の人気グルメのテイクアウトを確実に予約できるようになれば、その地域を訪れるきっかけになるかもしれませんし、テイクアウト予約ができることでその地域で別のお店や観光地に足を運んで頂ける機会の創出にもなると考えています。

「テイクイーツ」はテイクアウトの課題解決だけではなく、将来的に地域で暮らす方、地域で働く方、地域で訪れる方などさまざまな形で地域に価値を提供できるサービスに進化させていきたいと考えています。

身近な人が当たり前に使っているサービスを展開していきたい

――「テイクイーツ」が軌道に乗るまでの間、困難も多かったと思います。どんなマインドで乗り越えてこられましたか。

河野:ランプを創業してからこれまで受託の仕事と平行していくつも新たなプロダクトをリリースし、失敗を重ねてきました。「テイクイーツ」をリリースしてからも苦しい思いは何度も経験したと思います。

ただ、その中で「明日はダメなんじゃないか」という気持ちは1ミリもありませんでした。苦しい時こそ「明日はもっとよくなる」「これを乗り越えたら強くなれる」と思ってずっとチャレンジを続けてきた1日1日の積み重ねで今があると思っています。

――最後に、これからランプのメンバーになる方にメッセージをお願いします。

河野:ランプでは「地域社会を灯す。」というビジョンを掲げ、これまで実直に一歩一歩あゆんできました。ビジョンの言葉の通り、自分たちだけがよければというものではなく、家族や身の周りの方をはじめ多くの方を幸せにできるサービスを作っていきたいと思っています。

ありがたいことに「テイクイーツ」をたくさんの店舗さんに導入いただけるようになり、多くの方にとって暮らしが豊かになる、幸福度の高い日々を過ごすきっかけになるサービスになりつつあるように感じています。そんなサービスに携われることは幸せだね、とメンバーともよく話しますし、まだまだ自分たちが「テイクイーツ」を通じてもっと地域を良いものにしていきたいと思っています。

ランプではビジョンの実現に向けて、これまで以上にチャレンジを続けていきます。ビジョンに共感いただける方、地域を良くしたい、暮らしを豊かにできるサービスに携わりたいなどの想いのある方と一緒に地域の未来を創っていけたら嬉しいですね。

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